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updated 2012-08-23

2011.9.1

 このコーナーでは、「東大生の視点」と題して、毎回いろいろな東大生に好きなことを話してもらいます。記念すべき初回となる今回は、文学部に所属のIさんにお話を聞きました。テーマは「おすすめの本」です。

動物化するポストモダン


 こんにちは。なんだか初回を任せてもらいありがとうございます。僕が今回お話したいのは、『動物化するポストモダン』という本です。
 これはゼロ年代の社会学思想に多大な影響を与えた、東浩紀氏の代表作である評論です。
 評論と言っても、受験生の皆さんが普段読んでいるような難解なものではなく、新書という形で出版された読みやすいものです。受験の息抜きとして楽しく読み進めることができるうえ、内容が現代社会を綺麗に批評したものなので、小論文を課す大学を滑り止めで併願しようとしているような受験生が使える、道具となるような考えが豊富に含まれています。
 具体的にどのような内容かというと、今の若者が熱中する漫画・アニメ・ゲームなどのサブカルチャーに焦点を当て、そういった方面への志向性が生まれた理由を、現代社会を支配する「ポストモダン」の潮流のもと紐解いていくというもの。
 普段何気なく読んでいる漫画が、社会学的にマクロな視点から分析されます。
 その批評の主な立ち位置は、誤解を恐れずに物凄く大雑把にまとめてしまえば、現代社会に生きる我々は、物語として受容されるような、理解に時間がかかるようなものよりも、動物的な欲求をうまく充足させてくれる分かりやすいものを求める傾向がある、というものです。

ラー油とハイボール


 今年の5月に発売されて話題になった『ラー油とハイボール』という新書がありますが、この本では、なぜ焼酎よりもハイボールが好まれるようになったかという内容について触れられています。著者の子安大輔氏の指摘によると、焼酎は、その酒造年や土地、豊富な種類それぞれの持つ特徴といった、うん蓄と共に受容されていました。居酒屋はできるだけ豊富な種類の焼酎をそろえることを店の売りとし、客はうん蓄を語りながら焼酎を飲んだのでした。ところが最近になるとそういったうん蓄はむしろ敬遠され、むしろ、そのような拘りのないハイボールが共感を呼ぶようになった、というのです。この指摘は飲食業界のコンサルタントとして働く著者によるものですが、そこで前提とされる時代の空気というものは、前述の東氏の指摘と極めて近い相似形を描いています。
 また、『下流志向』でブームとなった内田樹氏の『街場のメディア論』では、メディアの世論化が指摘されています。ここでは、分かりやすさを求める視聴者が共感できるような番組を制作するために、メディアが決まり切った図式でしか物言いができなくなったと分析されています。これも一つの「動物化」の進行と言えるでしょう。
 このように、『動物化するポストモダン』はオタク的文化を批評対象としながらも、現代社会全体に通じるような指摘を投げかけており、その有用性はとても広いです。既に「動物化」の時代は終わり「決断主義」の時代になったという宇野常寛氏などもいますが、社会学の世界では未だに大きな影響を与えています。
 高校生の時から新書を買って読むという習慣がある人はあまり多くはないかもしれませんが、大学に入る前にこれ一冊だけでも読んでおくと、色々と役立つかもしれません。

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